【法律編】遺留分相当額を渡すと贈与になる?法律上の義務とトラブル回避法を徹底解説
👉 本記事は「遺留分相当額と税務の取り扱い」を解説する 【税務編】の記事 とリンクしています。
➡ 続けて読みたい方はこちら → 遺留分相当額は相続税?贈与税?【税務編】
目次
1. 遺留分とは?制度の基本を理解しよう
遺留分(いりゅうぶん)は、被相続人がどのような遺言を残しても、特定の相続人が最低限保障される取り分です。
例えば、子ども2人のうち1人に全財産を相続させる遺言を作成しても、もう1人の子には遺留分を請求できる権利があります。
👉 ポイントは「兄弟姉妹には遺留分がない」こと。
配偶者・子・直系尊属(親)にのみ認められています。
2. 遺留分侵害額請求とは?2019年民法改正のポイント
改正前は「遺留分減殺請求」と呼ばれ、遺産の一部を取り戻すことができました。
しかし改正後は「金銭請求権」に一本化され、現物で返還請求する権利はなくなったのが大きな変化です。
これにより、相続人同士で「不動産を取り合う」といった混乱は減少しましたが、お金の支払い能力がない場合の新たな問題が生じています。
3. 遺留分相当額を渡すと「贈与」になるのか
結論:贈与ではなく、法律上の義務に基づく支払いです。
贈与とは「無償で財産を与える合意」が必要ですが、遺留分相当額の支払いは相手方が請求できる「法定債権」に基づくもの。
4. 遺留分請求の期限と時効
- 短期消滅時効:侵害を知った時から1年
- 長期消滅時効:相続開始から10年
👉 この時効を過ぎると、遺留分は消滅してしまうため、請求側は迅速に行動する必要があります。
5. 法律的に注意すべきポイント
- 相続財産の評価方法:不動産評価、非上場株式評価など専門的
- 協議→調停→訴訟の流れ:合意できない場合は裁判所で決着
- 時効管理:請求を放置すると権利を失う
6. 生前に渡した場合は贈与になるケース
遺留分相当額を 相続前に「これで納得してほしい」と渡す行為 は、民法上の遺留分制度とは関係がなく、贈与税の対象となります。
また、相続開始後でも「法定額以上の上乗せ支払い」は任意性が強いため、贈与と判断されるリスクがあります。
7. 遺留分放棄という選択肢
相続人は生前に家庭裁判所の許可を得て「遺留分を放棄」することが可能です。
これにより、将来の相続争いを回避できます。
👉 ただし、遺留分放棄を得るためには「合理的な理由」が必要で、通常は金銭補填や十分な説明が前提になります。
8. トラブルを避けるための法律的対策
- 公正証書遺言で透明性を確保
- 遺産分割協議の前に専門家を交える
- 事前に家族間で資産承継について合意形成
9. 判例・実務での考え方
最高裁判所は、遺留分相当額の支払いを「債務的性質」と位置づけています。
そのため、遺留分の支払いは贈与契約に基づくものではなく、強制的に履行させられる債務であるという立場が確立しています。
10. まとめ
- 遺留分相当額は 贈与ではなく、法律上の義務
- ただし、生前に渡したり、過剰な支払いをすれば「贈与」となる可能性あり
- 放棄制度や遺言による対策を活用すべき
👉 次は【税務編】で「贈与税か相続税か」の具体的な税務処理を解説しています。
➡ 遺留分相当額は相続税?贈与税?【税務編】