家族信託とは?親の介護費用と実家の管理に備える基本と注意点
「親が高齢になり、お金の管理が心配になってきた」
「将来、実家を売って介護費用に充てたい」
「家族信託と聞くけれど、わが家にも必要なのだろうか」
そんなときに知っておきたいのが、家族信託や任意後見など、将来の財産管理を支える仕組みです。どの方法が合うかは、親御さんの希望や財産の状況、家族に任せたいことによって変わります。
この記事では、家族信託の基本と注意点を、任意後見やほかの備え方と比較しながら解説します。大切にしたいのは、ご本人が望む暮らしと、そのためのお金の使い方です。
情報確認日:2026年10月19日。本記事は制度の一般的な案内です。利用できる方法や手続きは、ご本人の状態・財産・契約内容などによって異なります。
目次
家族信託とは、財産の管理を信頼できる家族に託す方法
家族信託は、民事信託のうち、家族などに財産の管理を任せる仕組みの呼び方です。「誰のために」「どの財産を」「どのように管理するか」を契約で定めます。
| 役割 | 意味 | 親子で利用する例 |
|---|---|---|
| 委託者 | 財産を託す人 | 親 |
| 受託者 | 託された財産を管理する人 | 子 |
| 受益者 | 財産から利益を受ける人 | 親 |
この例では、子が管理を担当し、親の生活費や介護費用のために財産を使います。「管理する人」と「その財産で暮らしを支える相手」を分けて考えると、仕組みを理解しやすくなります。
家族信託でできること|日々の支払いから実家の管理まで
家族信託の使いやすさは、ご本人の希望や暮らしに合わせて、家族に任せる財産と、その使い方を準備できることです。「生活費を支払ってもらう」「実家の修繕を手配してもらう」「必要になったら売却する」といった内容を、あらかじめ契約に組み込むことができます。
元気なうちから管理を始め、判断能力が低下した後も、受託者が契約で定めた権限の範囲で管理を続けられます。親御さんの希望を共有しながら、家族が実際の支払いや手続きを担えるようにする備えです。
仮定の例:住まいや介護の状況に合わせて、子が管理を続ける
実家と生活・介護に使うお金を信託し、次の対応ができる権限を契約で定めた場合の例です。
- 自宅で暮らす間:託されたお金から生活費を払い、実家の修繕も手配する。
- 介護が必要になったら:託されたお金から介護サービスの利用料を支払う。
- 施設に移り、実家の売却が必要になったら:契約に沿って実家を売り、代金を親御さんの施設費用に充てる。
先の変化も見込んで契約を整えておくことで、暮らしが変わったときにも、家族が財産管理を進めやすくなります。
実際に任せられる内容は、対象となる財産や契約、金融機関の取扱いなどによって異なります。実家を売るかどうかも含め、ご本人の希望に合う管理の仕組みを考えましょう。任意後見で対応できる場合もあるため、後ほど違いを比較します。
参考:日本司法書士会連合会「民事信託支援業務の執務ガイドライン」、国土交通省掲載資料「民事信託」
介護に必要なお金から整理したい方は、親の介護費用と自分の老後資金の備え方もご覧ください。
家族信託を始める前に知っておきたい3つのこと
1.ご本人が契約内容を理解し、判断できることが必要です
家族の希望だけで契約を進めることはできません。ご本人の意思と、契約に必要な判断能力を確認することが大切です。認知症の診断名だけで可否を決めつけず、現在の状態と契約内容について専門家に確認しましょう。
参考:東京都「東京空き家ガイドブック2025」(清瀬市掲載)、日本公証人連合会「任意後見契約」Q16
2.管理を任される家族にも責任があります
受託者は、信託の目的に沿って財産を扱い、自分の財産と分けて管理する必要があります。収支の記録、家族への説明、管理を続けられなくなったときの対応まで考えておきましょう。信託に関する口座の取扱いは金融機関によって異なるため、事前確認も必要です。
参考:日本司法書士会連合会「民事信託支援業務の執務ガイドライン」
3.税金が自動的に安くなる制度ではありません
家族信託を利用すれば必ず節税できる、というものではありません。誰が利益を受けるか、受益権がどのように移るかなどで課税関係は変わります。対価を支払わずに受益権などを取得した場合には贈与税が生じることもあるため、税理士に確認することが大切です。
参考:国税庁「No.4427 新たに信託の設定等を行った場合」
家族信託と任意後見のメリット・デメリットを比較
どちらも、判断能力があるうちに将来の財産管理に備えられる点は共通しています。違いを考えるときは、財産の管理に加えて、どのような生活上の手続きを任せたいかにも目を向けましょう。
比較表は、画面の幅が狭い場合に横へスクロールしてご覧いただけます。
| 比較する点 | 家族信託 | 任意後見 |
|---|---|---|
| 任せられること | 信託したお金から生活費・介護費用を支払う。不動産の管理・修繕・売却などを、契約で定めた範囲で行う。 | 契約で定めた範囲の財産管理や、介護サービス・施設入居などの契約手続き。 |
| 始まる時期 | 契約で定めた時期。判断能力がある間から管理を始めることも可能。 | 判断能力が不十分になり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後。 |
| メリット | 生活費の支払いや実家の管理・売却などを、本人の希望に合わせて設計できる。判断能力が低下した後も、家族が契約に沿って管理を続けられる。 | 自分で支援者を選び、財産と生活上の手続きを幅広く任せられる。開始後は監督人のチェックを受ける。 |
| 注意点・負担 | 管理の対象は信託した財産。生活全般の代理権は得られず、受託者には分別管理などの責任がある。管理状況を確認する仕組みも検討したい。 | 契約を結ぶだけでは始まらない。開始後は監督人への報告や継続的な費用が必要になる。 |
| 費用の見方 | 契約設計、公正証書作成や登記など、内容に応じた初期費用が必要。専門家の継続支援や変更・終了時の費用も確認する。 | 公正証書作成などの初期費用に加え、開始後の監督人報酬や、契約によっては任意後見人の報酬も必要。 |
参考:日本公証人連合会「任意後見契約」、裁判所「任意後見監督人選任」、日本司法書士会連合会の民事信託ガイドライン
施設への入居手続きまで任せたい場合
任意後見では、施設入居などの契約を代理で行う権限を、あらかじめ契約に含められます。一方、家族信託の受託者になっただけでは、ご本人に代わって生活上の契約をする権限まで得られるわけではありません。介護サービスの契約手続きと、実際に介護を行うことも区別して考えます。
実家の売却代金を介護費用に使いたい場合
家族信託では、契約に沿って受託者が売却を行う備えができます。任意後見でも、必要な代理権を契約で定めれば、不動産の売却に対応できます。どちらを利用するかは、開始時期、ほかに任せたい手続き、管理する人の負担などを合わせて考えます。
参考:日本公証人連合会「任意後見契約」Q6・Q11・Q12、国土交通省掲載資料「民事信託」
2つの短い例で考えてみましょう
以下は、制度の特徴から考えた仮定の例です。ご本人が契約内容を理解し、判断できる段階で準備することを前提としています。
例1:親の暮らしに合わせて、実家とお金を管理したい
「親の生活費を払い、実家の修繕も手配したい。施設に移ったら、実家を売って費用に充てたい。」
→ 家族信託が有効な選択肢になりそうです。
必要な権限を契約に定めることで、日々の支払いから実家の管理・売却まで、家族が親御さんのために対応できるよう備えられます。
例2:将来、お金の管理と生活の契約手続きを任せたい
「今は自分でできるけれど、判断力が落ちたら、お金の管理も施設入居の契約も、あらかじめ選んだ人に任せたい。」
→ 任意後見が合っていそうです。
契約で決めた範囲で、ご本人に代わって財産や生活上の手続きを行う備えとして検討できます。開始には家庭裁判所による任意後見監督人の選任が必要です。
例に当てはまるだけで、利用する制度が決まるわけではありません。ご本人の希望、任せる財産や手続き、家族の負担、費用を合わせて考えましょう。
上の例は、国土交通省掲載資料「民事信託」、日本公証人連合会「任意後見契約」、裁判所「任意後見監督人選任」を参考に、理解のために作成したものです。
両方を組み合わせる方法もあります。その場合は役割や費用の重なりに加え、同じ人が両方を担うことによる利益相反の問題なども、専門家と確認しましょう。
ほかの備え方も、目的に合わせて比較しましょう
必要な備えは、一つの制度だけで完結するとは限りません。「いつから」「何を」「誰に」任せたいのかを整理すると、比較しやすくなります。
| 方法 | 主な役割と確認したい点 |
|---|---|
| 法定後見 (後見・保佐・補助) | すでに判断能力が不十分な方を支える制度。家庭裁判所が支援者を選び、判断能力の程度などに応じて支援の範囲が決まります。希望する家族が選ばれるとは限りません。 |
| 財産管理等委任契約 | 判断能力はあるものの、体が不自由で支払いや管理を任せたい場合などに検討します。任せる範囲と、将来の任意後見への移行も考えます。 |
| 金融機関の代理人制度・サービス | 預金の払戻しなどへの備えとして、利用中の金融機関に相談できます。登録条件や、判断能力が低下した後の対応範囲は金融機関ごとに確認が必要です。 |
| 遺言 | 主に亡くなった後の財産の引継ぎに備えます。生前の介護費用の支払いや財産管理を誰に任せるかは、別途考える必要があります。 |
参考:裁判所「成年後見制度について」、日本公証人連合会「任意後見契約」Q15、全国銀行協会の預金払戻し等に関する案内、国土交通省掲載資料「遺言」
費用は、始めるときと続ける間の両方で確認
費用を比べる際は、契約を作るときの金額だけでなく、管理を続ける間の報酬、内容を変更するときや終了するときの費用も確認しましょう。財産の種類や契約内容、依頼する専門家の業務範囲によって金額は変わります。
任意後見の監督人報酬は家庭裁判所が決めます。家族信託も、家族が管理するから費用がかからないとは限りません。見積りでは「何が含まれ、何が別料金か」をそろえて比較することが大切です。
参考:日本公証人連合会「任意後見契約」Q10・Q22、日本司法書士会連合会の民事信託ガイドライン
相談前に、ご家族で整理しておきたいこと
最初からすべての資料をそろえる必要はありません。分かる範囲で、次の4点を整理してみてください。
- ご本人の希望:これからどこで、どのように暮らしたいか。実家をどうしたいか。
- お金の見通し:年金や預貯金、毎月の生活費、これからの介護費用。
- 家族の役割:管理や手続きを任せられる人がいるか。無理なく続けられるか。
- 今いちばん心配なこと:日々の支払い、実家の管理、施設の手続き、家族間の情報共有など。
財産の金額だけで制度を選ぶのではなく、何に困りそうか、誰の暮らしをどう支えたいかから考えていきましょう。
海老名・神奈川で、介護と財産管理の備えを相談したい方へ
「家族信託が必要なのか分からない」
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